別れの曲 |
「浮かない顔だね、どうしたんだい?」 優しげな顔をして、公明は聞いた。 向かい合って座る。目に痛いほど白いテーブルクロス。 テーブルには深紅のローテローズが飾られている。この花は彼に似ている。 温められたマイセンに琥珀色の紅茶が注がれる。 「ニルギリ、好きだったろう?」 彼は紅茶を一口、口にすると、満足げに睫を伏せる。 軽く片手を上げると、それが合図のように音楽が聞こえてくる。 流れる音楽はショパンのピアノ曲。好きだといった覚えのある。 戯れに口にした一言を覚えていてくれたことに、少しの感動を覚える。 紅茶も、音楽も、言った本人でさえ思い出せない、昔のことを。 「 君、もしかして、楽しくないのかい?」 楽しい?この時間に終わりが来るのが分かっているのに。 大好きなお茶も、花も、音楽も。 目の前にいる人物に比べれば色あせてしまう。 この大輪の薔薇を目の前にすれば。 静かにピアノが流れる。 ショパンのエチュード作品10 第3番ホ長調。 好きだといったけれど、今はこの曲は聴きたくない。 こんな日に。最後の日に。 「最後くらいは笑ってくれないか?君。」 無理に笑おうとして、顔が引きつる。 どうしてこんな日に笑わなくてはならないのだろう。 もうすぐ彼はいなくなる。 目の前から消えてしまう。 「僕は君を困らせてばかりのようだね。」 本当に。困った人だから。 「でも最後だから言うよ。 。それじゃ。」 顔を上げると既に彼の姿はなかった。 さらりと問題発言と、薔薇の香りを残して。 『さよなら・・・。』 もういない人につぶやく。一筋の涙を流して。 初ドリームが趙公明編・・・。ドリーム小説のコンセプト、キャラ×自分だそうですが、 やる人はいるのか?ま、俺様ドリームだからいいかvまさに自分のためだけ。 ちなみにショパンのエチュード10第3番ホ長調、別名「別れの曲」です。 |