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 欲しいものはひとつだけ


    今日という日が終わりに近づいている。
   自分の生まれた、特別な日。
   自分が生まれた、ということに特別な感慨は持たないが、生まれなければ
   彼と出会うこともなかったかと思うと、やはり特別な日なのだ。
   その彼は、相も変わらず忙しそうに動き回っている。
   彼にとっては、今日という日など、またたくまに過ぎてしまう1年のうちの
   1日に過ぎないのであろう。
   小さ目の体をぱたぱたと動かしながら、彼―――太公望はこちらを見た。
   「、暇なら手伝っていけ。」
    特に、「暇」ということはなかったが、今日という日の残りを一緒に過ごせるという
   嬉しさに、思わず頷いてしまう。
   これから一日を書類の整理で終わらせてしまうということよりも
   もっと喜ばしいことがあるから。
   だって、無理に理由を設けずとも一緒にいられるなんて。
   「なんじゃ、 、おかしな顔をしておるのう。」
    そんなことを言い出す彼に微笑み返すと、山のように積みあがった書類を一緒に
   片付けていく。

   気がつくと陽は既に落ちて、辺りは暗くなってきている。
   部屋にはかりかりと書類を処理する音だけが響いていた。
   蝋燭の灯りを付ける為、燭台に手を伸ばす。
   と、彼も同じように手を伸ばし、その手が自分の手に触れた。
   「お、すまん。」
   予期せずに触れてしまったその手を慌てて引っ込める。
   触れたその手をもう一方の手で抑えると、なんだか片方の手だけが熱いような気がした。
   ぽうっと灯りが点り、彼の顔がはっきりと見えるようになった。
   灯りのせいだろうか?なぜか彼の頬が少し赤くなっている気がした。

   「悪かったの、手伝わせてしまって。」
   珍しく殊勝なことを言う彼に、そうではない、というように首を振る。
   たとえどんなことであろうとも、彼と一緒にいられるのは嬉しい。
   「だがの、今日はおぬしの誕生日ではなかったか?」
   いきなりそんなことを言われて驚いてしまう。
   まさか知っていてくれるとは思わなかった。よしんば知っていても覚えていてくれたとは。
   「これはの、いつも手伝ってくれるおぬしへの感謝の気持ちじゃ。」
   そういうと懐からがさがさと何かの包みを取りだす。
   「ほれ、手を出さぬか。」
   言われるままに手を出すと、ことり、と包みを手に乗せられる。
   彼の顔を見ると、開けてみよ、といいたげに頷いた。
   包みの中には

   「誕生日おめでとう、
   わしの選んだものじゃから、気に入らないかもしれないが・・・。
   もし他のものがよかったのなら言ってくれ。取り替えてもらうから。」
   そんなことはない、とあわてて首を振る。
   誕生日に欲しいものはひとつだけ。
   彼の側にいられること。
   それだけが何よりのプレゼント。
   照れくさそうに笑う彼の顔を見ることが出来なくて、
   「ありがとう。」と小さな声で感謝の気持ちを伝えることしか出来なかった。
   だけれども、その が、自分にとって一番の宝物になった。




  ドリーム小説太公望ちゃんにお誕生日プレゼントをもらおう!編でした。
  これは自分の誕生日にやった方が楽しいですね〜、きっと。


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