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 こねこといっしょ


   雲中子が子猫を拾った。なんでも、人間界に遊びに行った時に、捨てられていたのを
   見つけてきたらしい。
   どんな実験をする気か、と恐る恐る洞府を覗いたのに、どうも勝手が違うようで。
   だって、ちいさな子猫に、情をかけるような人間には見えなかったし。
   そんなちいさな子猫に、かけられる愛情があるのなら、もっと他の人間にもかけて欲しい。
   まあ、それはいいとして。

   「ほら、だめだよ、おいたしちゃ。」

   これなのだ、問題は。
   雲中子は、この子猫に事もあろうに「」などと名前をつけている。
   人が飼い猫にどんな名前をつけようと勝手だけれども、よりによって、その名前で
   なくたって、いいのに。

   「雲中子。」
   「なんだい、、ああ、くすぐったいよ。」
   「・・・くすぐってない。」

   不機嫌な顔をしてみても、雲中子はそ知らぬ顔で、猫を膝に乗せて遊んでやっている。
   子猫も気持ちよさそうに、雲中子の手をぺろぺろと舐めて。
   よほど優しくされているのだろう、逃げる様子もなく、雲中子に懐いている。

   「こんなに小さくても生きてるんだねぇ。」

   ぽつりと、雲中子が呟いた。
   こんな時、雲中子は医者の顔をする。おかしな研究に没頭している時と違い、
   生命を大事にと、訴えかけるような顔だ。

   「こら、そんなとこ舐めるな。」
   「・・・舐めてない。」

   人が、せっかく感心していたのに、雲中子は子猫に顔を舐められて、しまりのない顔を
   している。こんな顔、めったに見せないくせに。
   いたたまれなくなって、雲中子の洞府を後にした。

   しばらくたって、また雲中子の洞府を訪れた時、その子猫はいなかった。
   「まさか・・・実験に・・・。」
   そんなわけは無いと思うが、不安に思いながら、雲中子の部屋に入ると、
   雲中子は部屋の真中にぺたりと座っていた。

   「やあ、久しぶり。」
   「猫のは?」
   自分でもさらりと名前を言ってしまって、自己嫌悪に陥りながらも、雲中子を問いただした。

   「元気になったからね。人間界で飼ってくれそうな人を見つけて頼んできた。
    見つけたときは、あんなに、死んでしまいそうだったのに、みるみるうちに元気になって。
    やっぱり彼らは、下界の生き物だ。私たちとは時間の流れも、生きる意志も違う。」

   こころなしか寂しげな雲中子。
   人の生活もたくさん見てきて。人の生き死にもたくさん見てきたからこそ、本当に生き物が
   好きなんだな、なんて思ってしまう。

   雲中子の前にぺたりと座り込み、ごろんと膝に横になる。
   「?」
   「・・・にゃあ。」
   せめて、寂しさを少しでも紛らわせればと、猫の真似をしてみる。
   雲中子はくすくす笑って。
   よかった、少し元気が出てきたよう。


   「・・・そんなとこ舐めちゃダメだよ、


  いなくなった子猫の代わりに甘えさせて欲しい。
  また手元に戻ってきた、この場所で。





  雲中子子猫を拾う編でした。優しい雲中子さんが不気味っす。

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