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 あなたにそばにいて欲しい


    その部屋の前を通った時、一筋の明かりが見えた。
   そこは、ここ西岐の軍師の部屋である。
    こんな時間まで起きていて、終わらない仕事をしているのだろうか。
   夜も更け、辺りは寝静まっている。
   そっと、扉の隙間から部屋の中を覗いてみる。
   見ると、部屋の真中の机に、書類を広げたまま、太公望はうとうとと、眠っていた。
   疲れているのだろう。昼間は遊び呆けている振りをしながら、
   周りのものに気を使って「辛い」の一言ももらさないことを知っていた。
    どんなに仕事が大変で、ほとんど寝ていなくとも、そのそぶりさえ見せようとしない。
   もっと気を許して欲しい。そんなことを考えながら、そっと肩に上着を掛ける。
   春とはいえ、夜はまだまだ冷え込む。風邪でも引いたら大変だ。
    だが、人の気配に気づいたのか、彼は目を開けた。

   「なんじゃ、 、おぬしだったのか。」
    その声に、近づいたことを少しだけ後悔する。もっと休ませてあげたかったのに。
   どんな時でも周りに気を許していない。それが少し悲しかった。
   「ん・・・・、眠っていたようだのう。」
    彼は、大きく伸びをすると、顔をこちらに向けた。
   「なんて顔をしておるのじゃ。」
    まだ眠そうな彼を見ながら、起こしてしまった詫びを言う。
   「よいよい。まだやらねばならんことが沢山あるからのう。
    どうせなら、『起きろ〜!!』とでも叫んでもよかったのじゃぞ?」
   くすり、といたずらっぽく微笑んだ。

    よほどバツの悪い顔をしていたのだろう、そのことに気が付いた彼は、
   椅子から立ち上がると戸棚から何かを取り出した。
   「ほれ、いつまでもそんな顔をしておるのではない。腹がへってはおらぬか?
    よかったらこれを一緒に食べんか?」
    太公望の差し出した皿には、桃饅がのせられていた。
   「ひとつしかないから、半分こじゃぞ。」
    もったいつけたように、半分に割る。さりげなく大きい方を渡してくれる。

   「それ食べ終わったら、仕事を手伝っていけ。」
    自分の分はもう食べ終わって指についた餡を舐めながら話し掛ける。
   それは起こした罰かと問うてみると、彼は恥ずかしそうに答えた。
   「わしがおぬしと一緒にいたいだけじゃ、といったらどうする?」
    いつもと違い、大胆な台詞に思わず顔を見上げる。
   「あまり口に出しては言わぬが、
    わかったか、
   それは本当に小さな声で言われたが、その言葉は耳に残った。



  ホワイトデー用ドリーム太公望編でした。
  名前に「周公旦」とか入れると楽しいです。続きが目に浮かびますね!(ハリセンでぶたれる・笑)


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