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 君を探しに


    あんなに長かった戦いが終わって。沢山のものをなくした。
   沢山のものがいなくなった。
    その中で、一番大切だったもの――――。
   いつだって強くて、いつだって優しかった。
   誰より強くて、誰より優しかった。
   太公望、彼の人は、戦いが終わるとともに消えてしまった。
    戦いの中にあって、いつでも戦いを否定して。

   いつだったか、人は何のために生きるのかを問うた。
   「わしは思うのだが、。人生というのは、自分を探して生きる旅路のようなものだ。
    いつも何かを求めて、いつも居場所を求めて。
    わしはいつも思っていた。わしの居場所はここではないと。
    戦いの中にいるわしは本当の自分ではないのではないかと。
    だが、わしの中でケリをつけねばならんことがある。
    それが終わらねば、わしはここから動くことが出来ない。」

    その時からわかっていた。彼はこの戦いが終わったら、目の前からいなくなって
   しまうのだろうと。
    ただ、それが、こんなに早く、突然に来るとは思っていなかった。
   心の準備もしないまま。
    戦いが終わったら、言いたいことがあったのに。
   ――――あなたの旅に一緒に連れて行って欲しい、と。

    置いてきぼりにされたのは、体ではなく、心のような気がする。
   あの人がいなくなってから、心がどこかに行ってしまったようで。
   あの時言っていた。
   「おぬしは、おぬしの人生がある。おぬしも何かを求めて生きている。
    人との出会いは、旅路ですれ違う一瞬の交差点に過ぎない。」
    暗に一緒には行けない、と言われているようだった。
    でも、その時の彼があまりにも寂しそうに笑うので、自分も泣きそうになった。
    彼はそんな自分の髪をやさしく撫でて、それでますます泣きたくなった。
   どうせ置いていくつもりならば、やさしくしないで欲しかった。

    周りの人たちも、彼のことを忘れていない。
   いつも彼と一緒にいた四不象などは、目に見えて寂しそうだ。
   自分よりずっと長い時間を過ごしてきたはずの。
   だが突然、彼が言い出した。太公望を探しに行くと。
    その時に気が付いた。四不象は太公望のことを誰よりわかっている。
   その彼が言うのだ。本当は太公望は探しに来て欲しいんだと。
   「さんは、いかないッスか?」
    彼は言うのだ、本当は自分に探しに来て欲しいのだと。

    そうなのだろうか。
   自分の人生は、彼の旅路に交差しているだろうか。
   もう一度出会える日が来るのだろうか。
    あの時の彼の瞳を思い出す。どこか居場所を求めて彷徨う、瞳。
   自分も今はそんな瞳をしているのだろう。
   だって、自分の居場所は彼の横しかない。
    自分の旅は始まったばかりだ。居場所を求めて、自分も旅に出るだろう。

   きっと――――彼を探しに。



  太公望編。最終回の太公望ちゃんの遠くを見ている目が忘れられなくて
  書いた作品。題名は「ぼくを探しに」のもじり。この絵本はすごく良いです。


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