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 好きと言わないで


    今日は終南山に遊びに行く日だ。
   雲中子がここのところ忙しそうに何かを作っていて、なかなか相手をしてくれなくて。
   ひさしぶりのおよばれなのだ。心が浮き立ってしょうがない。
   「好きだ」なんて言った事はない。向こうも言ってくれたことはない。
   顔を見ると照れてしまうが、顔を見ないともの足りなくてしょうがない。
   鼻歌交じりに玉柱洞の扉を叩いた。

   「やあ、。いらっしゃい。よく来たね。」
   雲中子が嬉しそうに出迎えてくれる。
   雲中子がこんなに嬉しそうなことはめったにない。実験が成功した時とか、
   私の顔を見た時とか。うん、うぬぼれじゃなくて、これは本当にそう。
   ちらり、と雲中子の顔を見る。
   やっぱり恥ずかしいけれど、顔を見るとほっとする。

   「さ、よかったらどうぞ。」
   紳士的に椅子に座らせてくれる。
   目の前には雲中子お手製の菓子が並べられる。
   「君が来てくれると思って、用意したんだよ。」
   笑いながらドロップをすすめてくれた。
    ぱくりと口に入れる。雲中子お手製だけあって、美味しい。
   自分のために作ってくれたなんて、なんだか嬉しかった。
   「どうだい? 。美味しいかい?」
   雲中子が嬉しそうに言うので、心から答える。
   「うん、美味しい 。」
    あれ?何だか変?
   「雲中子、何か入れた ?」
   すると雲中子は我慢できないかのように笑い始めた。
   「わはははは・・・・、そのドロップを食べると、語尾が変な風に変換されてしまうのだ!
    実験成功だーーーー!!!!」

    それを聞いて、ちょっとむっとする。人を実験台にして楽しむなんて。
    何とかして、こらしめなければならない。
   「雲中子に言いたいことがある 。」
    くっ、くっと涙目になりながら笑う雲中子を、ひと睨みする。
   「好き。」
   「え?」
    いままで聞いたことのない台詞に、雲中子は驚いたようだ。
   私は気を良くして、続ける。
   「好き !好き !好き !!!!!!」
   普段言えなくてずっと言いたかった台詞を思い切り言ってみる。
   なんだかだんだん気分がよくなってきた。
   ずっと腹の中にためていたことを吐き出せて、気分がすっきりする。
   「語尾変換ナシで聞きたかったら、即刻解毒剤を出す。」
   勝った、と思いながら、勝利に酔いしれる。

   すると雲中子がにやりと笑いながらドロップを口に入れた。
   「私ものことが好き。」
   今度は私が慌てる番だった。ああ、もっと普通の時に言って欲しい。
   恨みがましい目つきをしていたら、雲中子が耳元でささやいた。
   「本当に、君のことが好きなんだ。」
   びっくりして雲中子の顔を見る。
   「なんて、素面じゃ言えないからね、ごめんね。」
   見ると雲中子が口に入れたはずのドロップが手に握られている。
   とことん、天邪鬼だと思いながら、言ってくれた台詞に満足して怒りはどこかへ
   消えてしまった。
   「雲中子が好き・・・。」
   言ってから二人顔を見合わせてくすくす笑いあった。
   それからおかしな会話を楽しみながら、楽しいお茶会を続けた。



  ドリーム小説雲中子バージョン。ドリームやるなら一度は実験体にされたい乙女の妄想。
  えっ、私だけですか?(笑)


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