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 病


    朝、目が覚めて寝台から降りると、足元がふらついた。
   「あれ?」
   なんだろう。地面が真っ直ぐじゃない。
   寝ている間に、地球が逆さまにでもなったようだ。
   ふらつきながら、寝台に腰掛ける。
   具合が悪い、熱がある。普段の自分からは考えられないことだ。
   ダメだ。このままだと、死んでしまうなどと悲壮な考えが浮かんでくる。
   いちかばちかの賭けだ。彼を呼ぶしかない。
   たとえそれがどんなにキケンな行為とわかっていても。

   「おはよう!!今日も元気かい?」
   「熱がある。」といって電話したにも関わらず、巫山戯たことを言っている。
   こんな巫山戯た奴を呼ぶんじゃなかった、と思ってしまう。
   「いいか・・ら・・・早・・・診て・・・。」
   息も絶え絶えに言っているのがわかったのか、雲中子は顔を覗き込んだ。
   「どれ。」
   いきなり額と額を合わされて、どうしたらいいのかわからずに、目をつぶってしまう。
   「どうやら熱があるようだねえ。」
   最初からそう言っている。だが先ほどの行為でますます熱が上がった気がする。
   「どうやら風邪のようだね。注射を一本打っておくよ。あとは薬。
   食後3回飲むこと。ちゃんと食事もするんだよ。風邪の時は栄養のあるものを・・・。」
   雲中子がてきぱきと指示するのを、熱に浮かされたように見ていた。
   なんだか今日の雲中子はたのもしい。
   いつもは変な実験ばかりするくせに、こんなにも頼りになるとは思わなかった。
   布団から半分だけ顔を出して、雲中子が薬の用意をするのを黙って見ていた。
   ああ、やっぱり医者だったんだな、などと改めて思ってみたりして。
   これは病。きっと病。
   雲中子がカッコよく見えるだなんて。

   「?」
   ずっと見ていたのが恥ずかしくて、思わず眠ったふりをしてしまう。
   「眠ったのかい?」
   冷やりとした手が、首筋に当たる。
   火照った体には気持ちがいい。
   「ゆっくり休むんだよ。元気になったらまた・・・。」
   一呼吸置いて続けられる言葉を期待して待ってしまう。
   元気になったら?その続きは?
   「遊んであげるからね。」

   「・・・
   寝言のフリをして小さく呟く。
   でも側にいてくれてうれしい。
   この手をしばらくそのままにして欲しい、だなんて思ってしまう。
   ああ、やはりこれは病。
   もしかしたらこの病は治らないかもしれない。
   どんな名医の手を持ってしても。
   そう、名医ではなく、迷医ならば、あるいは。




  ドリーム小説雲中子看病編。作者が風邪気味のときに熱に浮かされて
  作りました。ああ、私も病持ち・・・。


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