〓BACK〓


 赤く咲く花


   「茶というものはだな、ツバキ科の植物で・・・。」
   さっきから、自分はいったい何をしているのだろう、と思う。
   近くに用があって立ち寄った金霞洞。
   黒髪も眩い洞府の主は、さきほどから、お茶の講釈に余念がない。
   お茶を生きがいにしている、とは誰の言葉だったか。
   先ほどから口下手とは思えないほど流暢な講釈が続いていた。
   「茶葉には発酵させない緑茶、半発酵茶の青茶、完全発酵の紅茶など・・・。」
   低音の話し方が心地よくて、聞くとはなしに聞いている。

   先ほどから目の端に映って離せない、花。
   テーブルクロスの白さに眩しいくらいに映える赤い花。
   そのあまりにも赤い花は、どうみても彼に似合わない。
   もしかしたら誰か待ち人があるのかもしれない。
   自分は招かざる客なのではないのか?
   なぜなら、玉鼎は先ほどからお茶の話ばかりしていて、
   自分のことなどどうでもよさそうだ。
   まるで、その赤い花にでも話し掛けるように、自分の相槌など必要のないかのように。

   「 、もしかして私の話はつまらないか?」
   突然名前を呼ばれて驚く。
   顔を上げると玉鼎は心配そうにこちらを見ている。
   もしかしたら、誰か来るのではないのかと問うて見る。
   邪魔なのであればすぐに帰ろう、と。
   立ち上がりかけて、テーブルについた手を、大きな手で抑えられた。

   「待ってくれ。」
   今まで聞いた事のないような、哀願する声。
   こんな玉鼎は初めて見る。
   「私は・・・どうにも口下手で、お前に思うように話すことが出来ない。
    こんな・・・お茶の話でもよかったら聞いてくれないか?」
   本当に言いたい事は、何なのか。それを教えてくれたら、いいけれども。
   そう言うと玉鼎は、意を決したように、真っ直ぐに自分の目を見つめてくる。

   「
   ・・・どうもお前を前にすると、言葉がうまく見つからない。
   本当に思っていることの一つもいえやしない。それでも・・・それでもよかったら、
   こうして一緒に茶を飲んではくれまいか。」
   まるで赤い花が咲いたかのように、玉鼎は赤くなる。
   自分の心にも赤い花が一つ、ぽつりと咲いた。
   一世一代の告白を誰が無下にできるだろう。
   第一好きでなくちゃあんな講釈聞きつづけないというのがわからないのだろうか。
   可笑しくなって、くすくす笑い出す。

   「 ?」
   自分の笑い声に、動揺したように顔を見つめる。
   今度来る時には、茉莉花茶ジャスミンティと彼に似合う花でももってこよう。
   茉莉花茶には心が落ち着く作用があるから。
   自分に会うたびに動揺されてはたまらないから。
   そんなことを考えながら、玉鼎の入れたお茶を一口啜った。
   


  ドリーム小説アンケートで上位にランクした「玉鼎告白編」です。
  表題の割に壁紙が青い、という突っ込み待ってます。
  いいんです。島倉千代子も歌ってます。赤く咲く花青い花〜♪


〓BACK〓