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 ロマンス


   ポテトチップス、チョコレート、冷たいお茶に、甘栗?
   色とりどりに規則正しく陳列された、商品。
   コンビニに来ると、いつもどれにしようか迷ってしまう。
   「まーた悩んどるんか?
   耳元に、低音の声が響く。
   息がかかるほど、近くに。
   「なっ、!」
   びっくりするから止めて欲しいと、いつも言っているのに。
   首筋を抑えながら振り向くと、の方は、わざとやっているのか、ニヤリと笑った。

   また、というのが、これが初めてではないから。
   コンビニで迷うのはいつものことだけれども、今日はもうひとつ迷ってきた。
   週末で、ヒマだから、カウチポテトを決め込もうと、の家に
   押しかける事になり。
   レンタルビデオ屋で、見るものを選ぶのに、大分時間をかけてしまった。
   映画好きで知られるは、どれを選んでもイマイチな反応。
   しまいには、「の好きなん、選んでいいんやで?」
   と来たものだ。

   そんなこんなで、レンタルビデオ店を出て、コンビニに来たのだけれど。
   思わぬ悪戯に、抗議しようかと、口をあけると。
   「ほら、これ。」
   目の前に菓子の袋が突きつけられる。
   ポップコーン?
   「映画ったら、それに決まりやろ?」
   は、自分から、買い物篭を奪うと、慣れた手つきで、
   コーラだの、菓子だの詰め込んでいる。
   もちろん、自分の好きなチョコレートも入れてくれて。
   最初から、任せてしまえばよかった。

   「・・・お邪魔します。」
   ただいま、とは言わずに家に入るの後について、小さな声で挨拶を。
   シン、とした家の中から、答えがないのはわかっているけれど。
   家には誰もいない、と言っていたから。
   「好きなとこ、座り。」
   コンビニの袋を、部屋の机の上に置きながら、は言った。
   交互に持とう、って言ったのに、結局家まで持たせてしまった。
   「コーラ、コップに入れてくるから、ちょお待ってや。」
   部屋を出て行くを見送って、コンビニの袋から買ってきたものを机に広げる。
   ついでに、部屋のテレビをつけて、リモコンを手元へ。
   「なんや、準備ええなあ。」
   机中に広げた菓子と、チョコレートを口に入れた自分を見て、
   お盆にグラスを載せた彼は笑った。
   遠慮していたら、かえって相手のペースだ、ということに気づいた自分は、
   自分の家のように振舞う事にしていた。
   その方が、何故かも喜んでいたから。

   借りてきた映画は、古いラブロマンス。
   は、そういった映画が好きだと言っていたのを聞いたことがあるから。
   結局自分の好きなものではなく、相手の好きなものを選んでしまったというのは。
   少しでも、気持ちがわかるかと。少しでも近づけるかと、そんなこと。
   でも。
   映画の内容は、ありきたりのものだった。
   男がいて、女がいて、恋に落ちる。
   そんな、ありきたりの、話。
   どうして、ラブロマンスが、好きなのか、と、前に問うてみたことがある。
   は、一瞬、真面目な顔になって、こう言った。

   「『しあわせ』が、目に見えて、分かるから。」

   映画のラストは大抵決まって、ハッピーエンド。
   家に入った時の、あの、寂寥感。
   慣れてしまった一人の部屋。
   『しあわせ』とは、程遠い。

   「なんてな。本当は、ロマンス系だと、シナリオ重視やからな。
    アクション映画だと、どうもアカン。アクションだの、CGだのに力は入りすぎて、
    どうも馴染まん。話の筋がしっかりしとるほうが、ええ。」
   その後、映画の話を延々と聞かされて、誤魔化された気がするけれど。
   きっと、それが、本当。

   カラン、とグラスの氷が溶けた音がして、そちらの方に、目をやると、
   が黙って、こちらを見ていた。
   「映画は?」
   彼は、視線をそらさずに、答えた。
   「前に見たわ、これ。」
   ・・・言えばいいのに。
   「それにな。」
   それに?

   「の顔見てた方が、『しあわせ』やな。」

   まるで。
   さっき、自分が考えていた事を読まれたよう。
   くす、と笑うと、は、ゆっくりと、口付けた。
   まるで、今まで見ていた、ロマンス映画のように。


   多分、これは、ハッピーエンドで終るロマンスの始まり。
           




  ドリーム小説忍足侑士編。嘘臭い関西弁には目を瞑ってくださるとありがたい。


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