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 砂漠の華


    「って、言ったっけ。」
   ロック、と名乗ったその男は、人懐こい笑顔を見せた。
   バンダナを巻いた、淡い銀の髪が風に光る。
   名うてのトレジャーハンターとして、その街では少々名の知れた人物らしい。
   その年齢よりもかなり若く見られるであろう顔立ちに、少々意外な気がした。
   とある目的から、砂漠を越えた街まで行かなければならない私は、
   道案内人として、彼を紹介された。
   その目的と言うのは、人知れず行わなければならないことから、
   遂行するのは困難を要するものだった。
   そんな時に、街でトレジャーハンターの話を聞いた。
   宝探し専門の冒険家。悪く言えば、盗掘、ということか。
   宝探しを生業とする、ということは、金を積めば多少の無理は利くということだろう。
   彼は、ある目的があって、砂漠へ行くという。
   私にとっては好都合だ。もし、道案内人としてその道のプロを雇ったとしても、
   それが、私の目的を妨害する輩の手に落ちているとも限らない。
   別な目的のある、道案内人ではないが旅慣れた人物と言うのは、渡りに舟だ。

   「なんだ、随分と難しい顔してるな。。」
   私の考えを知ってか知らずか彼は呑気な表情を見せた。
   知り合ったばかりの人物に、呼び捨てにされるのは好きではないのだけれど。
   「せっかく知り合いになったんだから、楽しく行こうぜ!」
   訝しそうに見つめる私に気がつかないのか、彼は手を差し出す。
   どうやら、これが彼の本質らしい。
   一人で旅をする、というのは、かなり困難を極めるものだ。
   彼なりに身に付けた処世術というわけか。
   敵を作らない、誰にでも親しく振舞えば、利を得る事も多いのだろう。
   私は、彼について行くことにした。
   これは、私なりの勘だ。大丈夫だと、風が告げている。

   思ったとおり、旅は辛いものだった。
   黄砂の吹く砂漠。
   訪れる者は皆無に等しい。
   第一、通る道などない。全てが、砂、砂、砂。
   「このへんだったと思ったんだけど。」
   見渡す限り、砂しか見られない。
   彼はこんな所に、一体何の用事があるというのだろう。
   私の知るトレジャーハンターは、主に遺跡を中心に活動している。
   こんな建物すら見られない黄砂の中で、彼は何を見つけるつもりなのだろう。
   もしや、彼はもう既に私の知らぬ間に敵の手に落ちているのではないか。
   雇われた振りをして、この黄砂の真中に置き去りにする気ではないのだろうか。
   そうでなければ、このようなところに来る理由が無い。
   こんなところに置き去りにされてはたまらない。
   私は前を行く彼の風に靡くバンダナから目を離さないようにした。
   それが、私の道標であるかのように。

   「あれだ!」
   不意に大声を出し、彼は駆け出した。
   私は慌てて彼を追う。命綱のバンダナから目を離さずに。
   彼は数歩駆け出すと、砂の上にしゃがみ込んだ。
   「な、なにしてるの?」
   「ほら、これ。」
   彼が指をさした先には、奇妙な砂の塊があった。
   それは、まるで、花弁のような形をしている。
   「砂漠に咲く、砂の華だ。これが見たかったんだよな〜。」
   彼は嬉しそうに笑っている。
   なんで、こんなものを。こんなものを見るために、この砂漠に入ったというのか。
   おそらくその華は、風が吹けば消えてしまうだろう。
   手にすれば、崩れてしまうだろう。
   そんな、一銭にもならないもののために、この砂漠に入るなんて。
   だが、彼は、心底嬉しそうにその華を見つめている。
   まるで、何物にも替えがたい宝物を見つけたかのように。
   触れることすら出来ない華を。

   「なんで、トレジャーハンターなんか、やってるの?」
   彼はようやく私の方へ顔を向けた。
   少し、はにかんだような顔で笑い、こう言った。
   「夢のためだ。」
   「夢?」
   パンパン、と砂を払い、彼は立ち上がる。
   ファサッと彼を包むマントが風に靡く。
   「風が呼ぶんだ。新しい風が。立ち止まる事を許さないかのように。」
   風。新しい風。
   この、魔導に侵略されつつある国に、新しい風を起こそうとする流れがある。
   私の帯びた使命は、その風を起こそうとする、砂漠の王に親書を届ける事。
   それを知られれば、魔導の王国に廃されるだろう。
   だけれども、新しい風に、私は全てを託したい。
   この男もそうなのだろうか。
   「もさ、訳があるんだろ。そうじゃなきゃ、こんなところまで来ないよな。」
   まるで、同士を見つけたかのように、彼は微笑んだ。
   いつのまにか黄砂の風はおさまり、砂漠の向こうから日の光がさす。
   神々しいまでに、銀の髪が光に映える。
   まるで、銀の王冠をかぶったかのように。

   「そろそろお出ましのようだ。」
   彼は、背後を振り向くと、砂漠の奥を指差した。
   城。
   城が見える。
   先ほどは、なかったのに、何故。
   「それじゃ、な。王様に、ヨロシク。」
   声に振り向くと、彼は砂漠を後にしようとしているところだった。
   王様に、という言葉に私ははっとする。
   彼は、知っていたのだろうか、私の目的を。
   彼は、知っているのだろうか、風の起点を。
   私は追いかけようとして、それを諦めた。
   私には使命がある。
   風が、私を呼んでいる。
   私は、風に靡く彼のバンダナを見つめた後、城へと向き直った。
   もう、後ろを振り返らない。
   私の行くべきところは、前にある。
   そこには、新しい風が吹いているだろう。




  77000HITリクエスト。FF6のロック・ドリーム小説。
  ロックはラブです。FFシリーズで1・2を争います。ロックの素敵さは伝わったでしょうか(汗)


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